決別

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そして僕は今バイト先から歩いて我が家へと帰っている所だ。 「クリスマスイヴかぁ……」 僕は既に暗くなった空を見上げる。 そこには満天に輝く星達がたくさんあった。 そして次に僕は自分の右手へと目をやる。 そこには少し大きめの紙袋。 これは桜へのクリスマスプレゼント。 中身は大きな熊のぬいぐるみ。 桜は可愛い物が大好きなのだが、ご存知の通り我が家は貧乏。 このようなプレゼントは買ってあげたことはない。 僕は愛しの妹の笑顔を思い浮かべ、自然と顔がにやけてしまう。 「喜んで、くれるかな……」 僕は小さく呟いて、またにやける。 そんな感じの思考をめぐらせながら歩いていると、僕が住んでいるボロアパートが見えてきた。 僕は高鳴る心臓を落ち着かせ、小走りで我が家へと向かっていく。 人生で最悪のクリスマスイヴになるとは知らずに。
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