決別

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しかし、桜は下を向いて動かない。 「どうしたんだ?」 もしかしてプレゼントが気に入らなかったのか? 僕は少し心配でオロオロと桜の様子を伺う。 「グスッ……」 「へっ……!?」 僕は桜の予想外の反応に間抜けな声を出してしまう。 するとようやく桜は顔をあげてくれた。 その顔は鼻水やら涙やらでくしゃくしゃになっていたが、それがまた愛おしく思えた。 「うわ~ん!お兄ちゃん!」 桜は大声で泣きながら僕に抱き着いてくる。 僕はしっかりと桜を受け止めると、そのまま抱きしめた。 「よし、よし」 僕は桜の頭を撫でる。 「ヒック……ぐす……」 泣き止む気配がない桜の頭を必死で撫でつづける俺。 その時…… 「うるさいわよ、眠れないじゃない!」 奥から不機嫌そうな母親がどすどすと大きな足音を立てて僕達へと近づいてきた。
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