決別

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「母さん……」 僕は少し嫌そうな眼差しを母親へと向ける。 「何よ?その目は……」 「いや……」 僕は、ぱっと母親から目をそらす。 すると母親は、泣きながら僕に抱き着いている桜へと目をやった。 そしてその目線は桜の持っている熊のぬいぐるみへと注がれる。 「何?このぬいぐるみ?」 母親は桜の手からぬいぐるみを無理矢理引きはがす。 「あっ……」 「ちょっと母さん! それは僕が桜にあげたものなんだから返してよ!」 僕は悲しそうな桜の表情を見て、少し声を荒げて母親に言った。 「あんた。 こんなもん買うお金がどこにあったの?」 母親はぬいぐるみの頭をきつく掴みながら怒ったように言う。 「いいじゃないか!クリスマスイヴくらい!」 僕がそう言った瞬間、母親は勢いよくぬいぐるみを僕に投げ付けてきた。
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