決別

9/11
前へ
/477ページ
次へ
「な、何するんだよ母さん!!」 僕は我を忘れて大声で叫ぶ。 「うるさい!!」 びりびりっと母親の怒声が響き渡る。 その声にびっくりしたのか、それとも急に僕から引きはがされたのが怖かったのか、桜はさらに泣き声を大きくする。 それが母親の感情をさらに刺激してしまった。 「うるさいって……」 母親は台所にあるフライパンを片手で持ち、振り上げる。 その瞬間、電流が走るような感覚、そしてぞくっとする悪寒が同時に僕の背筋に流れ込む。 「言ってるでしょうが!!」 母親と言う名の悪魔は僕にとって命より大切で愛しい妹にフライパンを思いっきり振り下ろす。 「や、やめろー!!!」 その刹那、僕は桜に飛びつく。 がんっ!! 重く、鈍い嫌な音が部屋に響き渡る。 「いっ……」 「ひくっ……お兄ちゃん?」 桜は僕の下じきになっていて、何が起こったのか理解出来ていないらしく、泣き声で僕の名を静かに呼ぶ。 僕は即座に母親と桜の間に飛び込み、桜を庇ったのだが振り下ろされた凶器は僕の頭に直撃していた。
/477ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5742人が本棚に入れています
本棚に追加