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謝ったまま頭を上げない美里に、今までの殺気は感じられない……。
「…もう、顔を上げて?」
私の言葉に美里は頭をゆっくり上げた。
「……私、別に怒ってないから。いつか颯太に言わなきゃいけないと思ってたし……。それに、美里は颯太に言っただけで、周りには言わないでくれたでしょ?ありがとう。」
すると美里は頭を横に振った。
「……それだけじゃない。イブの日、私ずっと颯太君と居た。前の日から颯太君の携帯電話を知らないと言ってずっと持ってた。愛先輩に酷いメールを送ったのも私。愛先輩が噴水の前でずっと待ってるの知ってながら、私は1日中颯太君を振り回してた。ごめんなさい。」
「……………そうなの?颯太、メール送った時、充電無かったって……。遅れて来た時も用事あって遅くなったし、携帯電話アパートに忘れて連絡出来なかったって言ってた……。………でもね、確かに矛盾してるとこあるなって思ったの。充電切れてたなら、なんで酷いメールを送ってこられたんだろうって……。」
「…ごめんなさい。全部私が悪いの。………颯太君、言わないでくれてたんだ……全部自分のせいにしてまで……。」
美里の瞳から涙の滴が流れ落ちた。
「…颯太らしいね。なら、颯太の好意に甘えて?私は今の事聞かなかった事にする。」
そう言って私は美里を抱き寄せた。
―…美里も颯太が大好きなんだよね?私に負けないくらいに………。
美里は私の腕の中で泣いた。
彼女の新入社員の頃を思い出す……。失敗した時は、こうやって慰めてたなって………。
思い出すと鼻がくすぐったくなった。
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