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思わず知らず、拳を握り締めて。
マリィを傷つける奴は、赦さん!!
俺の決意とは裏腹に、彼女はブンブン頭を振って。
「まさか。いろいろ心配して、お話ししてくれたの」
「…なら、いいが」
基本的に、誰にでも可愛がられているマリィだから、今まで仲良くしていた奴がいきなり…ってこともないとは思っているけれど。
「でね…その、ね、ガザくん」
何だか非常に思い詰めたような表情に変わると。
「わたし、女としての魅力、無い、かな…?」
は?
そして、フラッシュバックするのは、そそくさと消えた彼ら。
「…先輩達に何を言われた」
「あ、あのね、ほら、わたしと啓さんが、その、お付き合いして結構経つでしょ。それで、先輩達が心配してくれて。その…き、キス…したか、って聞かれて、ね」
キス、だぁ?
怒鳴りたくなる感情を、必死で抑える。怒鳴る相手はマリィじゃない。わずかな理性をフル動員して笑顔を浮かべ。
「…キス、したのか…」
マリィは顔を朱に染めると「まさか!」
だよな。そんなことをしたら、どうなるか、啓自身がよくわかっているはずだ。
安堵した俺の神経は、次の言葉で再び嵐へ。
「でも、普通、わたし達くらいのお付き合いになると、してもおかしくないって言われて…啓さんにとって、わたし、魅力、ないの、かな?」
彼女の握り締められた手がフルフルと震えていることに気づいた。伏せた目が、赤く染まっていることにも気づいた。
「やっぱり、わたしが『死神』だから、断りたくても断れないの、かな」
こんな弱音を吐くマリィは、俺にしか見せない姿。
一生、啓なんかに見せるんじゃねぇ。
切なくて、右腕でマリィを抱き寄せた。
「お前は魅力的だ。どんな女より、魅力的だ。マリィ、俺は、この世の誰よりもお前が好きだ」
どうしようもなく切なくて、俺は伝えるしかなかった。
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