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静かな夜だった。
クリスマスも終わり、町はお正月までのしばしの休みをとっているようだった。
希紗子が曇った窓ガラスを手で拭いて外を見ると、クリスマスには降らなかったくせに雪が降っていた。
母さんはもう寝てしまっただろう。
ほぅ、とため息をもらすと、窓ガラスは再び白く曇り何も見せなくなった。
時計を見ると、もう十二時をとっくにまわっている。
父さんはまだ帰ってきていなかった。
またどこかの居酒屋で飲んだくれているのだろう。
会社をリストラされてから、父さんは毎日そんな調子だった。
それにしても今日は特別遅い。いつもはもう十時くらいには帰ってきているはずなのに。
希紗子は父さんに帰ってきてほしいと思う反面、帰ってきていないことにどこかほっとしていた。
父さんはもう昔の優しかった父さんではなくなっている。どうせ帰ってきても、母さんと口ゲンカをして寝るだけだ。
そんな諦めが、心の中にあったからかもしれない。
希紗子はなんだかやるせない気分になった。
家にいるのが辛かった。
コートをはおり、ふらりと外へ出た。
雪は静かに、しんしんと降り続けていた。
今夜は特別冷え込んでいるようだ。
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