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俺は百合を止めようと手を伸ばしたが、すぐに引っ込めた。
どんなに手を伸ばしたところで、届きはしない。ただ、空を切るだけ。そう気付いてしまったから。
行き場を失った腕をゆっくり下ろしながら、遠ざかっていく百合の背中を俺は見つめた。
立ち上がって追いかけることもできない自分が無性に情けなくなった。だからといって何かするわけでもなく、俺は芝生に寝転んだ。
俺の心境とは全く正反対な綺麗な夜空。雲一つない。
無数の星の中でも強く光を放つ北極星がとても眩しく見える。
同じところでずっと輝いているけど、手が届くことはない。
まぁ、当たり前か。
俺は自嘲気味な笑みを浮かべるとゆっくりと体を起こした。
そして、百合の姿が見当たらないことを確認すると歩きだした────
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