2366人が本棚に入れています
本棚に追加
/341ページ
「ナオ……?」
気づけば、かおりが俺の顔を心配そうに覗き込んでいた。
「大丈夫ですか? ずっとボーとしてたけど……」
「大丈夫。ちょっと眠かっただけ」
本当は百合のことを思い出して悲壮感に浸っていたのだが、そんなこと言えるはずもなく、適当な嘘をついてしまった。
「そうですか……」
そう言って視線を前に戻すかおりの横顔は少し哀しげだ。
どうも、俺は嘘が下手らしい。
「ナオは百合ちゃんに会って何を伝えるつもりですか?」
かおりは視線を前に向けたまま、こちらを見ることなく、唐突な質問をぶつけてきた。
俺は窓の外の景色を眺めながら、口を開く。
「考えてない。百合に会った時、俺の口から出た言葉が俺の気持ちだと思うから」
そんな、ちょっと格好つけたことを言うと、隣でかおりが吹き出した。
「ふふ……。ナオらしいですね。計画性なさすぎですよ」
笑いながら、そう言うかおりを横目で見るとじっと俺を見つめていた。
最初のコメントを投稿しよう!