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雪を踏むと鳴る、ギュッという独特の音を鳴らしながら雪道を歩く。
その途中でふと、空を見上げた。
「…今の生活に満足、か。」
少しだけ切ない気持ちになりながら、降り続く雪にそっと手を伸ばした。
別に今の生活が嫌いな訳じゃない。
だけど、もっと別な未来があったんじゃないかって…時々思う。
こんなことを思うようになったのはいつからだっただろうか?
雪は手の中で溶けて消えていく。このまま手を伸ばしても仕方がないのだ。
誰も居ないとはわかっていたが、このまま手を伸ばしているのは不審者に値する。
伸ばした手を引っ込め、寒い空気から逃げるようにポケットに手を突っ込み、自宅へと足を進ませたその時だった。
「…白い…鍵?」
一面雪に覆われたこの地面の中から、誰かに見つけてもらうのを待っているかのように淡い光を放つ白い鍵。
月の光で瞬くその鍵には、何か不思議な気分にさせられる。
自転車や車や家の鍵とも違う。綺麗な鍵。
例えるなら…そうだな。
…うまい例えが見つからない。
「まぁ…いいか」
白い鍵をなんとなくコートのポケットにしまった俺は、再び自宅へと足を進ませた。
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