彼女の羊水が枯れるまで

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「あれ?七海、禁煙やめたの?」 ホステス仲間の由樹は、ひとつ年上の29歳だ。 この仕事も潮時かな、というのが口癖。 (よく見てるなぁ。) 4ヵ月前まで吸っていたメンソール。 そんなに強い煙草じゃないけれど、久々に吸ったから少しクラクラする。 「あはは。禁煙向いてなかったみたい。」 「………。」 由樹がにらんでる。 こういうとこ、鋭いんだよね…。 目をそらしたあたし。 4ヵ月、親友に言えなかったあたし。 トントン。 細くて白い指で由樹がテーブルの上を叩く。 「知ってたよ。」 彼女はいつも、直球だ。 「気付かないとでも思ってた?あんた、酒も煙草もやめちゃってさ。」 「………。」 「言わないのか言えないのかそれはいいと思った。でもね、無かった事にするのはダメ。」 「……ごめん。」 声になったのか、ならなかったのか。 由樹はソフトパックの煙草の袋から最後の1本を取り出すと、袋をクシャッとねじった。 「…ばかねぇ。一人で辛くなって!答えまで出しちゃって…!」
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