平凡な一日

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綾咲高等学校。そこが拓の通う学校の名前である。 文武両道を目指した学校で、運動部も偏差値もそれなりに高いレベルに達している。意外にも校則は緩く、髪を染めるのと、ピアスを一つ付けるくらいならば校則違反にはならないのである。 拓と香織は雑談しながら自分の教室に入る。 教室の中央では男子達が集まって、何故か盛り上がっている。 「なんか、教室に入るのが嫌になってきたぞ」 「私も」 拓と香織が教室に入るのをためらっていると、クラスメイトである一人の女子が切羽詰まった様子で駆け寄ってきた。 「香織、冬崎君! 大変なのよ。朱秦(あかはた)君が、朱秦君が!」 落ち着きを無くした様子で、クラスメイトは拓と香織の共通の友達の名前を連呼する。 しかし、拓と香織はそんなクラスメイトとは対照的にうんざりとした様子で溜め息を吐き、互いの顔を見合わせて小声で話合った。 (おい、またあのアホが何かしたぞ) (今日はどっちが止めに入る?) (俺は嫌だぞ) (な、私だって嫌よ!) (けど昨日は俺が行ったから今日は香織の番だろ) (う、う~……しょうがないわね。嫌だけど私が行くわ) 話し合いの結果、香織が止め役を引き受ける事になり、渋々といった様子で男子の集まりへと向かう。 男子達の中央では、髪を金色に染めた一人の男子が机の上に立って、ギレン総帥よろしく仰々しい演説をしていた。 「去年の我がクラスの出店は記録的な早さで営業停止になった。何故だ! 俺は考えた。その結果、一つの答えに辿り着いた。それは色気が無かったからだ! よって、今年の文化祭の我がクラスの出し物は『お色気過剰スクミズメイド喫茶』に決定であーる!」
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