平凡な一日

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ババーン! という効果音が聞こえてきそうな程の迫力ある演説をする金髪の男子生徒。 彼の名は朱秦 燈弥(あかはた とうや)。金色に染めた頭髪がトレードマークの祭り好きの拓のクラスメイトとである。 燈弥は香織と同じく、拓の中学からの友人である。 「イィヤッホゥ!!」と言って、燈弥の演説に賛同してテンションの最高潮に達するクラスの男子生徒達(拓は除く)。そんな中を勇ましい女子の声が突き抜けた。 「そこまでよ! 朱秦燈弥!」 香織の声だ。 彼女の声でさっきまで騒いでいた男子生徒達(繰り返すが、拓は除く)は、水を打ったように一気に静かになる。 香織は男子生徒の壁を割って入り、燈弥の眼前に立つ。 位置的には燈弥が香織を見下ろし、香織が燈弥を見上げる形となっているが、香織の方が気迫に満ちている。 「ふっ、やはり来たか我が宿敵……いや、我が天敵よ!」 不敵に笑って燈弥は言った。 格好良く言い直しているが、宿敵から天敵では力関係的にはランクダウンしているぞ。という言葉が拓の喉から出かけたが、本人の名誉の為、拓は敢えてその言葉を飲み込んで生暖かい眼差しで行く末を見守る事にした。 「とうっ!」 特撮ヒーローさながらの掛け声を発しながら、燈弥は机から月面宙返りをしながら床に華麗に着地する。 周りからは「すげぇ!」「運動部でもないのにあの無駄な運動神経の良さは一体何なんだ!」「あいつ運動部に入れば良いのに…」「じゃあ、お前は燈弥にお前の部に入って欲しいか?」「いや、それはちょっと……悪い奴じゃないんだけどよ…」と言った声が聞こえてくる。 しかし、燈弥と香織の周りだけ別の空間になってしまったかのように、二人の耳には届かなかった。 「香織よ、俺は今年の文化祭は必ず成功させるつもりだ。だからいくらお前と言えども『お色気過剰スクミズメイド喫茶』計画の邪魔をするなら…討ち果たすまでよ!」 「させない。そんな事は絶対にさせない! クラスの為、学校の為、そして私が背負う者の為、あんたの計画を必ず阻止してみせる。高階香織の名に賭けて!」 何やら最終決戦のような盛り上がりを見せる燈弥と香織。それを遠くから生暖かい眼で見守っていた拓はポツリと言った。 「香織、メチャクチャノリノリだな」 拓の一言は止め役の香織が燈弥と同レベルに墜ちてしまった事を表していた。しかし、当の本人の耳には届かなかった。
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