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幾つもの新興企業が生まれ、目まぐるしい経済発展を遂げる現代日本。
だが、光に影は付き物。
企業の発展の裏には、血で血を洗う泥沼の闘いが毎晩のように繰り広げられていた。
深夜零時、沢鳴市内某所にある小さなビルの屋上では、黒服に身を包んだ数人の男達と一人の少女が対峙していた。
黒服の男達の手には、それぞれナイフや特殊警棒といった凶器が握られている。
一方、少女の手には、純白の鞘に収まった刀が握られている。
両者の間には険悪と言うのも生温い程の殺気に満ちており、男達か少女、そのどちらかが動きだせばすぐにも殺し合いが始まってしまいそうである。
「小夜、我が社から奪ったディスクを返してもらおうか」
一人の黒服の男が殺気を孕んだ声で言う。
「断る。私は自身の目的を果たすためにディスクを奪ったのだ、貴様らの指図など受けない」
少女は確かな決意を秘めた凛とした声で言い返す。
すると、黒服の男は『愚かな…』と吐き捨て、手にしていたナイフを構えた。
「我ら神崎グループが実働部隊"インヴィジブルハンマー(不可視の鉄鎚)"を敵にした愚かな我が身を呪うがいい」
黒服の男がそう言うと、他の黒服の男達は一斉に少女に襲いかかった。
明らかに少女の方が多勢に無勢。
少女に勝てる見込みなどない。
しかし、少女に焦りの表情は無い。それどころか、何の表情すらなかった。
「もらったぁっ!!」
少女の死を確信した一人の男がナイフを逆手に握って、少女を刺し殺そうと跳んだ。
だが、男のナイフが少女に到達するよりも速く、少女の持っている鞘に収まった刀が男の即頭部を捉え、コンクリートの地面に叩き付けられた。
何か果実の砕けるような生々しい音が響き、男の身体が数回痙攣した後、動かなくなった。
だが、少女は勿論。黒服の男達すらもその事を気にも留めず、闘いを続行する。
「イィヤァァァアアァァァッ!!」
今度は背後から襲いかかってくる。
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