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まるで閃光のような鋭さと迅さを持った太刀筋。そこには情けも容赦も一切無い。
拓は、彼女の明確な殺意に身動き一つ取れず、刀を受け入れるしかなかった。
拓は、何もできないまま自分の死を直感した。
しかし、拓の首に迫っていた刀は届くことはなかった。
「?」
不思議に思った拓は銀髪の少女の様子を伺い、抜刀した体勢のまま固まっている少女を見て気付いた。
「こいつ……気絶している、のか?」
銀髪の少女は確かに拓を見ている。だが、その眼は拓を捉えておらず、虚ろだった。
様子を伺おうと触れようとした時、銀髪の少女の身体は糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「!? 大丈夫か!」
今の瞬間まで自分を殺そうとしていた少女であるのにも関わらず、拓は彼女の元に駆け寄った。
銀髪の少女を抱き起こすと、グッタリとしていたが、呼吸で胸が上下しているところからするとただ気絶しているだけであった。
「なんだよ、気絶しているだけか…」
何故か拓は安堵の溜め息を吐いてしまっていた。
襲われた事など完全に忘れ、銀髪の少女の身を案じる拓は、とりあえず救急車を呼ぼうと携帯電話を取り出して119番にかけようとしたが、銀髪の少女の持つ刀を見て思いとどまり、銀髪の少女を背負った。
一般人が刀を所持する事は法律によって禁じられている。それなのに、この銀髪の少女は刀を所持し、平然と拓に斬り掛かってきた。
つまり、この銀髪の少女は日常的に刀を振り回しているという事だ。
その事を理解した拓は救急車を呼ぶと厄介な事になると予想し、家に運ぶことにしたのである。
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