それは、好機か危機か

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  四度――桜花の季節(トキ)を数えた。 流風は今、人生の岐路に立っている。 傀藤とのせつない別離の後も、時間は変わらず流れた。 流風が進んだ大学にも、強くはないが野球部があり、事情を知らぬ部員から何度か勧誘された。 自分を認めてくれる人間が、ここにも存在する――甲子園での感動が甦り、流風は素直にうれしく思う。 だが、もうプレーは続けられない……その事を告げると、マネージャーとして、野球部に力を貸して欲しいと云われた。 将来、監督になれた時、大学の4年間で触れる生きた野球は、必ず活かされる―― 流風は、ありがたくその誘いを受け入れた。 部活動に、勉強に、充実した日々は瞬く間に過ぎてゆく。 多忙極まる生活の中の一服の清涼剤――それは、時々届く、傀藤からのメール。 内容は決まって一・二行の短い近況だったが、受け取った瞬間だけは、ふたりの距離を忘れられた。 そして四度――桜花の季節を数えた。 流風は今、人生の岐路に立っている。  
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