それは、好機か危機か

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  教職は取ったものの、昨今続く不況の影響か採用枠が狭く―― 特に、硬式野球部のある高校を希望する流風にとっては、まさに“就職氷河期”となっていた。 そんな時、流風の許に高等学校野球連盟から一本の電話が入る。 突然で申し訳ないが、大阪にある事務所までご足労戴けないか、との事だった。 「――京都の、洛西学園に勤務  して戴けないでしょうか?」 いつもはこの上なく回りくどい高野連の会長自ら、傀藤も驚きの直球で要点を呈示する。 経験はないが、冥々と押し寄せる事態を飲み込む流風。 これは異例中の異例である――という事を。 自分の近況は、どうとでも調べられたのだろう。 その点は、あまりよい気はしないものの、ある程度冷静に受け止めた流風だったが…… 「……おっしゃる意味が、よく  判りませんが……」 戸惑いを隠そうともせず、問い返した。 「私は、洛西学園の理事長を  しとります“紺野(コンノ)”と  申します」 今度は、会長の隣に座っていた人物――高野連のお偉方だとばかり思っていた白髪雑じりの男性が、いきなり自己紹介を始めた。 話は、再び会長主導で進められる。 洛西学園野球部は、危機的状況に陥っているらしい。 現在、監督不在のまま活動は続けられているが、この先も監督を引き受けてくれる人物が見つからなければ、野球部の存続は難しい――との事だった。  
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