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「本当に……情けない限りです。
“知らなかった”というのは、
怠慢以外の何物でもない。
本来なら――
監督よりも、校長よりもまず
先に、私が学園を去るべき
だったのでしょうが……
去るなら、野球部を立て直し
てからでも遅くはないと――
そう、思ったのです」
紺野は、若い流風に深々と頭を下げた。
それこそ、藁をもつかむ想いだったのだろう。
「当然ですが、あたしには経験
がありません。 先ほどは、
偉そうにお引き受けするなど
と云いましたが……
本当に、あたしでよろしいの
でしょうか……?」
話を聴いて、怖じ気づいた訳ではない。
ただ、本当に自分が向かうべき場所なのか、必要とされる人間になれるのか……
紺野個人の認定など、真の価値もないかもしれない。
それでも――
流風は、その頼りない言葉を欲した。
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