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「「決勝の相手は、平晏に決まっ
たそうやな」」
息遣いで流風の動揺は伝わったが、傀藤は当たり障りのない会話を運ぶ。
「「就任2年目で府大会決勝進出、
さすがやな」」
そして、傀藤は流風の相槌を待たずに続けた。
「傀藤くん――」
「「オレ、おまえに謝らなあかん
ことがあんねん」」
気まずさに耐え切れなくなった流風に、言葉を紡がせない傀藤。
そして――
「「プロポーズのこと―― あれ、
忘れてくれへん?」」
声色ひとつ変えず、彼はそう云った。
どこかで、判っていた事だった。
だが、流風は頭の芯が冷たく凍りゆく感覚に見舞われる。
そう、判っていた。
あのタイミングでプロポーズした傀藤の気もちは。
そして、流風自身心のどこかで望んでいたはずだった。
傀藤がプロポーズを取り消してくれる事を。
それなのに――
頬をつたう涙……流風は、泣いてしまう自分が許せなかった。
部員たちに対する裏切りに思え、雫を乱暴に拭う。
そんな彼女の耳に、思いがけぬ言葉が届けられた。
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