明けない夜はない

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  「「……おまえが、好きや」」 冷たいはずの携帯が、急激に熱を帯びた気がした。 そして、熱帯夜だというのに、流風の手は酷く震えている。 「「おまえが…… 好きや……」」 「――――……」 傀藤の声は、こんなに甘かっただろうか…… 流風は、脳内に生じた温度差に戸惑う。 「「……判ってんねんで?  大事な時に、おまえを困らせ  ること云うてるって……  けど…… 今やから云いたい  オレの気もちも判って欲しい。  蒼真、オレはおまえが――」」 「ずっと―― ずっと…………  ずっと好きだった……  傀藤くんのこと、チェンジ  アップをもらったあの日から  ずっと…… 好きだった……」 何もかも、抑え切れなかった。 流風は、迸る12年分の想いを一気に吐き出す。 伝えたくて、伝えられなかった想い。 だが―― 「……じゃあ、なんで……?  なんでプロポーズを忘れろ、  なんて云うの……?」 まだかすかに残る冷静な部分が、流風の声帯を震わせた。  
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