3418人が本棚に入れています
本棚に追加
気の毒なほど純情で、どうにもならない野球馬鹿同士だからこそ、足りない言葉でも伝わり、判り合える。
流風は傀藤の強い愛を知り、傀藤は流風の激しい愛を知る。
それは、ふたりを隔てる海にも空にも、侵される事のない想い。
幸福、緊張、恐怖、待望……
相対する感情が心を埋め尽くし、決戦前夜は眠れなかった流風。
それでも、あらゆる感覚は怖ろしいほどに冴え渡っていた。
泣いても笑っても、今日ですべてが決まる。
昂揚する気もちは、選手時代と何ひとつ変わらない。
窓越しに注ぐ朝陽が、蒼い炎を湛えた流風の瞳を刺激した。
――深く、考える必要はなかった。
はじめての経験でも、その絵には譬えようのない説得力がある。
誰よりも早く、集合場所へと現れた遼介。
対峙した流風は、彼の背中を走る後光を確かに認めた。
京都という土地柄に関係なく、それは至極神秘的に映る。
飯泉が自分に先発を任せてくれた時も、こんな風だったのだろうか……
挨拶も交わさず、流風と遼介はただ、みつめ合った。
最初のコメントを投稿しよう!