明けない夜はない

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  気の毒なほど純情で、どうにもならない野球馬鹿同士だからこそ、足りない言葉でも伝わり、判り合える。 流風は傀藤の強い愛を知り、傀藤は流風の激しい愛を知る。 それは、ふたりを隔てる海にも空にも、侵される事のない想い。 幸福、緊張、恐怖、待望…… 相対する感情が心を埋め尽くし、決戦前夜は眠れなかった流風。 それでも、あらゆる感覚は怖ろしいほどに冴え渡っていた。 泣いても笑っても、今日ですべてが決まる。 昂揚する気もちは、選手時代と何ひとつ変わらない。 窓越しに注ぐ朝陽が、蒼い炎を湛えた流風の瞳を刺激した。 ――深く、考える必要はなかった。 はじめての経験でも、その絵には譬えようのない説得力がある。 誰よりも早く、集合場所へと現れた遼介。 対峙した流風は、彼の背中を走る後光を確かに認めた。 京都という土地柄に関係なく、それは至極神秘的に映る。 飯泉が自分に先発を任せてくれた時も、こんな風だったのだろうか…… 挨拶も交わさず、流風と遼介はただ、みつめ合った。  
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