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『先発は遼介』――流風の発表に、異を唱える者はひとりもいなかった。
エース・八尋は微苦笑を浮かべたが、それはどこかふっ切れた表情にも見えた。
流風が感じた“説得力"――それが、部員たちにも伝わっていたのかもしれない。
托された遼介は、責任と重圧をひとり噛みしめる。
今まで以上に強く、流風を甲子園へ連れて行きたいと思った。
球場に着くと、思いがけぬ再会が流風を待っていた。
まるで、同窓会のように――
彼女を想う友人らが、碧空の下顔を揃えていた。
「……みんな――……」
驚きと喜びとで、うまく話せない流風。
亜沙美との一件で世話になった樋渡や橘を始め、そこには安曇と彩和、複雑な立場である平晏高校OBの楠本と奥貫の姿もあった。
「すげえだろ。
オレら、誰ひとり示し合わせ
てないんだぜ?」
各々が今日という日に都合をつけ、流風の――洛西学園の応援に駈けつけたのだと、半ば興奮気味に話す樋渡。
誰かの結婚式でもここまで集まらないのでは――と、北見が冗談を飛ばした。
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