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――風が、流風の背を押すように吹いた。
傀藤の、友の温かい気もちは、彼女にとってまさに“追い風”となったのだ。
傀藤の告白が試合前夜でなければならなかった理由(ワケ)も、今の流風になら理解できる。
心に射す光を遮るように覆う正体不明の澱(オリ)……
自身が注ぎ込んだと責任を感じた傀藤が、その澱を取り去ってくれたのだ――と。
そして、この決勝戦に集まってくれた友の気もちも、流風には痛いほど伝わった。
自分が作りたかったチームの原点は、彼らと過ごした日々の中にある。
ただ、能力が高ければよいとか、野球だけをやっていればよいとか……自分が向き合う部員たちには、そんな風に思って欲しくなかった流風。
もちろん、仲間を思いやる事だけがすべてではない。
だが、誰かを想える人間なら、野球も同様に想えるはずだ。
純粋に、真剣に。
友を想い、野球を想い、走り続けた洛西学園野球部。
夢の入口は、すぐそこまで迫っていた。
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