煌めきの向こう側

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  そう強く思っているのは、洛西学園ばかりではない。 守備に散った平晏ナインにも、どこにも負けない練習をして来たという自負があるだろう。 ここまで来たら、勝ちたい気もちの強い方が勝つ――そんな綺麗事は通用しないのかもしれない。 心・技・体、すべてを惜しみなく出し尽くし、勝った方が強者なのだ。 流風は自身の魂を円陣の中に投じたまま、晴れ渡る空を仰ぐ。 降り注ぐ陽射し同様、今日の試合は厳しくなりそうな気がした。 午後1時、プレイボール。 鳴り響くけたたましいサイレンが、流風の記憶の扉を叩く。 限りなく、あの夏と似ている。 ただ、違うのは……自分の立場と、スタンドから注がれる温かい視線。 勝つ事は、もちろん大切だ。 だが、この素晴らしい環境の中で野球ができる喜びを、最高の仲間と共にみる至上の夢を、感じながらプレーして欲しい…… 流風は、そう願わずにはいられなかった。  
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