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初回の攻撃とは思えぬほど悔しがりベンチへと戻った茅を、流風は温かい手で迎えた。
その裏で、彼女は相手の守備を甘く見過ぎていた自分に喝を入れる。
小細工は通用しない――
6年前、あんなに素晴らしいチームを作り上げた江嶋を、流風は陽炎越しにみつめた。
切り換えろ――
流風は戒めに似た念を籠め、自分の両頬を二度叩く。
そして、打席に向かう坂巻に握った拳を掲げてみせた。
打て、何が何でも打て――その拳の真意をそう受け止めた坂巻は、左側の口角を上げ、そっと目を伏せる。
茅が出塁したなら、自分は“2番打者”に徹し、茅が凡退したなら、自分が“先頭打者”になる――
坂巻は、自身の立ち位置を充分過ぎるほど理解していた。
とはいえ、気もちを空回りさせてはならない。
冷静さを呼び込むよう肩で息を吐き、坂巻は短くグリップを握った。
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