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長身の平晏高校エース。
ダイナミックなフォームから投げ降ろされる重い球に、坂巻は懸命に食らいつく。
渇いた音を立ててラインを割る白球を何度も見送った後の12球目――遂に、坂巻のバットの芯が切れ味鋭い変化球を捉えた。
素直な打球は投手の足許、中堅(センター)前へと抜けてゆく。
一塁塁上、得意げな表情を見せる坂巻に、ベンチの流風は大きなガッツポーズを贈った。
――自分は、この人と出逢うために野球を続けて来たのだ……
ふと、そんな強い確信が坂巻の胸に息衝いた。
始まりは、ごくありふれたものだった。
仲のよい近所のお兄さんにメンバーが少ないから入ってと頼まれたのが少年野球チームだった――ただ、それだけの事。
別に、断って気まずくなる間柄ではなかったし、どちらかというとサッカーの方に興味があった坂巻だが、
『いいよ、楽しそう』
と、小さな嘘を吐いた。
八方美人な性格が云わせた言葉である事も否めないが、適当にやればよい、嫌になったら辞めれば済む話……根本的には、そう思っていたからだ。
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