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「オレを外野へ押しやったんや。
なにがなんでも勝ってもらい
ますよ? ..
――――傀藤先輩」
ベンチ前、軽いキャッチボールで肩を整える遼介に柔らかな一瞥をくれ、八尋は彼らしからぬ独り言をもらす。
様々な嫌味をぶつけたが、八尋は遼介の事を心底嫌っていた訳ではない。
それはお互い様なようで――
八尋からの視線を感じた遼介は、白球を送る手を止め、立てた親指を八尋へと突き出した。
投球だけでなく、打撃にも自信を持っている八尋。
1アウト一塁、4番が控えているこの場面、自分に求められるのは確実な進塁打だ。
頭では判っていたし、流風のサインもてっきりそうであると思っていた八尋だが……
『好きな球を打って』
ベンチの流風は、大きなジェスチャーで彼に告げた。
作戦も何もあったものではない。
だが八尋は、自分は信頼されているのだと、素直にうれしかった。
そして思う。
その篤い信頼に応えたい――と。
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