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ずっと7番に座っていた自分に対する分析は、どの程度のものだろうか。
額に吹き上げるような息を吐き、八尋は相手投手の心奥に潜り込む。
自分なら、こんな時どう攻めるのか――様々な局面を思い出しながら、八尋は自身の中で結論を紡いでゆく。
――無駄な事だ。
試合は生きている。
過去のデータを引っ張り出しても、それはただの気休めにしかならないと八尋は気づいた。
ならばどうするか。
自分が歩んできた道を、自分自身を信じてバットを振るしかない。
そう考えると、劇的に八尋の肩から力が抜けた。
進むのに、遅すぎる事はない。
甘っちょろいとばかり思っていた若き監督が、そう教えてくれた。
気づいた時から、人はやり直せる。
いつでも、何度でも。
感謝の気もちを明確にするには、甲子園への切符を贈るしかない。
渾身のひと振り――八尋のバットが、鼓膜を裂かんばかりの高い叫声を上げた。
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