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マウンドは譲っても、主役の座は譲らない――
華麗に舞うバットが、優雅に翔ぶ白球が、八尋の主張を代弁していた。
意図的に求めずとも、劇的な展開は決勝の舞台に舞い降りる。
初の3番とは思えぬスイングから生み出された八尋の打球は、佇むフェンスを眼下にスタンドへと消えた。
風船が弾けるように――三塁側洛西学園応援スタンドから、爆発的な歓声が上がる。
思わぬ展開、初回先制2ランを放った八尋に、惜しみない拍手喝采が贈られた。
頼もしいのは、八尋が頬を緩めず、凜々しい表情を湛えたままベースランニングを終えた事だ。
喜びは内側で噛みしめる――試合はまだ始まったばかりなのだと、自身に、チームに発破をかけているかのようだった。
本塁打の余韻冷めやらぬ中、後続が打ち取られ――結局、初回の攻撃は2点で終了。
だが、選抜にも出場した平晏高校相手に挙げた2点は、この試合の大きな楔になると誰もが思った。
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