煌めきの向こう側

18/31
前へ
/500ページ
次へ
  1アウト一塁、坂巻は自身の役割をしっかりと胸に抱き、打席へと向かう。 初回と異なり、一塁走者(ランナー)の茅を確実に送る事――坂巻の役目は、それ以上でも、それ以下でもない。 回も浅く、同点である今は、自ら生きようと欲を出すバントではなく、本当の意味での“犠打”が必要なのだと、坂巻にはよく判っていた。 頬を刺す太陽光が、銀色のバットに反射する。 白い光を眩げに睨み、そのままの眼差しをマウンドへと向ける坂巻。 状況からして当然、送りバントという策は相手バッテリーに読まれているだろう。 そんな中、決める事こそ―― 少しはずれて走り来る白球を捉える坂巻のバット。 「醍醐味やねんなぁ」 我ながら絶妙な場所へと送り出した白球をみつめながら、坂巻は一塁で心地よいアウトコールを聴いた。  
/500ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3418人が本棚に入れています
本棚に追加