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1アウト一塁、坂巻は自身の役割をしっかりと胸に抱き、打席へと向かう。
初回と異なり、一塁走者(ランナー)の茅を確実に送る事――坂巻の役目は、それ以上でも、それ以下でもない。
回も浅く、同点である今は、自ら生きようと欲を出すバントではなく、本当の意味での“犠打”が必要なのだと、坂巻にはよく判っていた。
頬を刺す太陽光が、銀色のバットに反射する。
白い光を眩げに睨み、そのままの眼差しをマウンドへと向ける坂巻。
状況からして当然、送りバントという策は相手バッテリーに読まれているだろう。
そんな中、決める事こそ――
少しはずれて走り来る白球を捉える坂巻のバット。
「醍醐味やねんなぁ」
我ながら絶妙な場所へと送り出した白球をみつめながら、坂巻は一塁で心地よいアウトコールを聴いた。
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