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――八尋は、自分が3番に据えられた理由をはっきりと理解していた。
マウンドを遼介に譲った事に対する、水飴のように甘い監督なりの配慮――ではない。
本気で勝ちたい、勝てると踏んでの起用なのだ。
7番を打っていた時から、チャンスに強かった八尋。
それは、彼の性質が大きく反映されている。
その事を、監督は冷静に把握し、こうして形として表したのだ。
大人を“尊敬”する事など、そんな感情が自分の中に存在するなど、思ってもいなかった八尋。
甘く、どこかほろ苦い感覚に痺れる頭を軽く叩き、八尋はグリップを握りしめる。
2アウト二塁、ここで欲しいのは――
八尋は、素速いテイクバックから気魄と共にバットを送り出す。
得意の外角、逃げるような変化球を弾き返した八尋は、自身の中ではじめて祈った。
どこでもよい、抜けてくれ――と。
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