3415人が本棚に入れています
本棚に追加
/500ページ
――忘れられぬ季節があるのは、幸せな事なのかもしれない。
だが、忘れられぬ季節に囚われ、迷宮を彷徨うが如く苦悩の日々を送るのは、ある意味“不幸”だと云える。
それでも、彼女は云うだろう。
『幸せだ』――と。
彼女の傍にはいつも、“野球”がある。
楽しい事ばかりではない。
うれしい事ばかりでもない。
だが、
彼女の夢はいつも、“野球”と共にあるのだ。
彼女にとっては、苦悩に負け、夢を手放す方がずっと不幸なのだろう。
彼女は、蒼い日々の中でみた夢と同等の“夢”を追う。
激流の中、
暴風の中、
豪雨の中――
変わらぬ、強い瞳を湛え、彼女は走る。
碧い季節(トキ)はまだ、始まったばかり――……
最初のコメントを投稿しよう!