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  ――忘れられぬ季節があるのは、幸せな事なのかもしれない。 だが、忘れられぬ季節に囚われ、迷宮を彷徨うが如く苦悩の日々を送るのは、ある意味“不幸”だと云える。 それでも、彼女は云うだろう。 『幸せだ』――と。 彼女の傍にはいつも、“野球”がある。 楽しい事ばかりではない。 うれしい事ばかりでもない。 だが、 彼女の夢はいつも、“野球”と共にあるのだ。 彼女にとっては、苦悩に負け、夢を手放す方がずっと不幸なのだろう。 彼女は、蒼い日々の中でみた夢と同等の“夢”を追う。 激流の中、 暴風の中、 豪雨の中―― 変わらぬ、強い瞳を湛え、彼女は走る。 碧い季節(トキ)はまだ、始まったばかり――……  
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