霜降の日

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あの頃は、なにもかもが不安定だった。   十月も後半に差し掛かる頃、僕の眠りは肌寒さに邪魔されて、布団を被っても眠れぬ日々が続いていた。 思えば僕は、ストレスからか寝付きが良いほうではなかった。 全てをおっぴろげに話せるほどの仲のヤツは近くにいなかったし、頼みの両親も新幹線で二時間のところに住んでいる。 慣れちゃいるけど、小さなアパートのドアを開ければ、僕はいつだって独りだった。   近所と関わるのは回覧板やゴミ出しのときだけ。 あとは狭い階段の譲り合い。 素っ気ない挨拶も、今の僕にはちょうどいい。 少しだけ。 少しだけ、寂しさは残るけれど。  
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