霜降の日

5/6
前へ
/6ページ
次へ
小さな薬屋。 薄汚れた外装に、透明の自動ドア。   「いらっしゃいませ」   カウンターの奥に並ぶ薬棚から 若い女性の声がした。   「あ、町田書店です。」   そういうと、奥から私服の女性が顔を出した。   「今手が離せないの。 悪いけれど、そこで座って待ってて頂戴。」   バッサリと切りそろえられた、真っ直ぐな黒い髪が揺れる。 同じように黒い瞳は、待合席であろうソファーへ促すように動いていた。   「あ、じゃあ失礼して・・・」   今時なかなかお目にかかれない猫足の黒いソファーに、両手をつくようにして座った。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加