第二章 人形の生活 -15歳

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朝がくる。また、人形の一日が始まる…。 母が起こしにくるまでは、ずっとベッドの中…。 うずくまり、自分で自分を抱き締めて、声を殺して叫んでる。助けて、誰か助けてと…。 ドアを叩く音、ドンドンドン母だ。「彩香起なさい。」また、一日が始まる。 一、服は、与えられたもの以外は着てはならない。 一、日記は毎日書く事。ただし、父と母に見せること。 一、外から帰って来たら、かばんの中身を全部だして見せること。 一、男女交際は禁止とする。 一、門限は8時半とする。 一、買い食いはしてはならない 一、人に家のこと、自分のことは話してはならない 一、外泊は旅行を含めて禁止とする これが普通で変わることなく、毎日が過ぎていく。当たり前のように…。 それでいい。私が人形になることで、父と母が笑ってくれるなら、私はいくらでも人形になる。 自分の事を自分で考えなくていいなんて、楽チンじゃない。 父や母のいうままにしていたら、周りの見物人が、誉めてくれる。 「彩香ちゃんはいつも綺麗ね。 彩香ちゃんは良くできるね。 彩香ちゃん…彩香ちゃん…彩香ちゃん…」 そして、私は優等生になっていく。 父と母が作り出した人形。何の不安も、自分が人形だということを、このときの私は気付いていなかった。 これが、当たり前。 これが、常識。 これが、正解。 随分、長い間、何の不安もなく、何も恐れず、父のいいなり…母のやり方…。 何の疑問もないはずなのに、気持ちが落ちてく。どんどん落ちてく。 頭の中がガヤガヤとしている。不安な気持ち、人に罵られた気持ち…記憶がとんだ…私の知らない私が勝手に動き始めた。image=219986394.jpg
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