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朝がくる。また、人形の一日が始まる…。
母が起こしにくるまでは、ずっとベッドの中…。
うずくまり、自分で自分を抱き締めて、声を殺して叫んでる。助けて、誰か助けてと…。
ドアを叩く音、ドンドンドン母だ。「彩香起なさい。」また、一日が始まる。
一、服は、与えられたもの以外は着てはならない。
一、日記は毎日書く事。ただし、父と母に見せること。
一、外から帰って来たら、かばんの中身を全部だして見せること。
一、男女交際は禁止とする。
一、門限は8時半とする。
一、買い食いはしてはならない
一、人に家のこと、自分のことは話してはならない
一、外泊は旅行を含めて禁止とする
これが普通で変わることなく、毎日が過ぎていく。当たり前のように…。
それでいい。私が人形になることで、父と母が笑ってくれるなら、私はいくらでも人形になる。
自分の事を自分で考えなくていいなんて、楽チンじゃない。
父や母のいうままにしていたら、周りの見物人が、誉めてくれる。
「彩香ちゃんはいつも綺麗ね。
彩香ちゃんは良くできるね。
彩香ちゃん…彩香ちゃん…彩香ちゃん…」
そして、私は優等生になっていく。
父と母が作り出した人形。何の不安も、自分が人形だということを、このときの私は気付いていなかった。
これが、当たり前。
これが、常識。
これが、正解。
随分、長い間、何の不安もなく、何も恐れず、父のいいなり…母のやり方…。
何の疑問もないはずなのに、気持ちが落ちてく。どんどん落ちてく。
頭の中がガヤガヤとしている。不安な気持ち、人に罵られた気持ち…記憶がとんだ…私の知らない私が勝手に動き始めた。
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