序章

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  「お前は愛についてどう考える?」 「……え? なに?」 「だから、お前は愛について、どういうお考えをしていらっしゃるのですか?」 「何だその敬語もどき。馬鹿にしてんのか」 「ボクの敬語のどの部分に、馬鹿にしてる要素があるんだ。何だ、もどきって」 「敬語では相手を『お前』とは呼ばない」 「……ん、そういえばそうだったな。すっかり忘れていた。幾らお前が馬鹿だとはいえ、敬語を使う以上は相手を敬称で呼ばなければいけなかったな。思い出させてくれてありがとう」 「結局馬鹿にしてんじゃねーか! ……はあ。で、何の話だっけ?」 「貴方は愛について、どういう考えをお持ちですか?」 「敬語はもういい!」 「いやいや、直せるものは直さないといけないだろう。お前の告白と違って、敬語の間違いは直せるものなんだから」 「相手によっては取り返しがつかねーぞ。……つーか、俺の告白のどこが間違いだ!」 「状況と内容を省みろ。お前の告白は、恋文を出す思春期の子供以下だよ」 「うっさいわ! ――お前さあ、何でそんなことを俺に聞くわけ? 忘れてるかも知んないけどさ、俺はお前に惚れてるんだよ? 恋してんのよ?」 「そうだっけ? まあいいや。――つまり、お前にとって愛とは恋愛を指すわけだ。しかし愛と言っても色々あるだろう。先程言った異性へ向ける恋愛、友人や家族へ向ける友愛、他にも親愛やら敬愛やら慈愛やら偏愛やら憎愛やら、どれだけ探してもきりがない」 「最後の二つは違うだろう」 「ただの雑談なんだ。細かいことは気にするな」 「あんまり細かくないような気がする……」
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