序章

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「へえ、義理チョコそんなに貰えるなんて凄いな。人脈広いんだねえ」 「義理チョコじゃねえよ! いや三分の一は義理だけど。でも下駄箱は埋もれたんだぞ! 段ボール箱で家まで運んだくらいだ!」 「菓子代がういて良かったじゃないか」 「ちっがーう! 確かに良かったけど、なんでそんなことを自慢しなきゃならないんだ! っていうか、結局俺の言うこと信じてねーじゃん!」 「あーはいはい、信じてます信じてます。お前は嘘を吐いてません」 「その言葉が嘘にしか聞こえない……」 「相手の言葉を嘘と決め付けるのは、いただけないな」 「お前に言われたくねー! ……そうじゃなくて、俺が言いたいのはだな――俺がモテる姿を見て、焼餅を妬いたりしないのかってこと!」 「焼いた餅って美味いよなー。海苔巻いて醤油とか絶品だよね」 「お前、人を弄ってそんなに楽しいか……!」 「確かに人を弄ったり揶揄ったりするのは楽しいが、この場合はそれ以前の問題だろうに。お前は自分の告白が断られたのを忘れたのか? ふった相手に妬くわけないだろ」 「そうだけど! 少しは俺の男心を察してくれよ!」 「無理」 「即答かよ!」 「即答以外は不可能な問題だからね」 「……泣いていいか?」 「鬱陶しいので却下します。ええと、どこまで話したっけ」 「慰める気ゼロかよ……たしか、愛と関係性がどうのこうのってとこまで」 「ああそうだった。――つまりだな、一概に愛と言っても色々あるわけだ。友愛、親愛、敬愛、慈愛――」 「おい、それ序盤に言ったぞ」 「そうだっけ? まあ適当に話せばいいじゃん。所詮は雑談なんだから」
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