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「……でも、相手の心を理解してないと、信頼なんて出来ないぜ?」
「人は感情ではなく、行動で信頼するものだよ。第一、人の感情なんてのは、それを抱いた本人でさえ理解できない時もあるんだ。はたしてお前は、自分の感情を正しく理解できているのか? この言葉を聞いて尚、愛してると言えるのかな? そして、お前が愛していると告げた者が、お前自身に向けるこの感情を、一体どう捉えているのやら。少々気になる所だが、それはまた別の機会にでも聞かせてもらおうか。――あはは、感情とは真に不思議なものだねえ!」
「……本当、きつい事を言うよな、お前は」
「きつい事なんて言ってないよ。所詮は雑談。ただの気楽な会話だよ」
「――雑談、ね」
「さて、このボクを恋慕う変わり者よ。そんなお前に、今一度問おう」
「…………」
「お前は、愛についてどう考えるんだい?」
◇ ◇
少女はいつも、意味のない問いかけをした。
少女はいつも、中身のない会話をした。
そんな彼女の中身には、謎だけが詰め込まれていた。
彼女の心を理解することはきっと、どんな人間にも叶わなかったのだろう。彼女自身も、理解してもらおうとは思わなかったはずだ。
彼女はどこまでも謎に満ち溢れていて、どこまでも孤独に在り続けた。
だが俺は、そんな彼女に恋をして、そんな彼女の全てを理解しようとした。そうすればきっと、彼女が俺に恋してくれると思ったから。
想いを返してくれると、信じたから。
その信用が、どれだけ無意味なのかも知らずに。
それこそ――魔法のような幻想だというのに。
これは、俺と彼女と、それを取り巻く人達の、たくさんの不幸と幸福を綴る物語。
魔女物語、始まります。
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