第一章

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 魔法世界『ファンタジア』。  この世界には、魔法というものが存在し、それが当たり前となっている。  魔法とは、想像を現実へと変える、非現実な力。  しかしそれも当然となってしまえば、その認識は非現実では無くなり、普通へと変わってしまう。  だが、忘れないでほしい。  どれだけ普通となっても、どれだけ当然となっても。  それが非現実である事は、事実として不変なのだ。  ◇ ◇  始業式というのは、まず最初に校長の祝辞から始まるものだ。そして、何人もの先生が順番ずつ挨拶を述べていき、時期によっては転校生の紹介なんかも入ってくる事がある。その後、校長等が号令をかけて、式は終了する。生徒の退場はそれからだ。  因みに、現在とある学園の講堂で執り行われているのは、始業式ではなく入学式。最初は新入生の入場から始まる。ついでに言えば、名称が『学校』ではなく『学園』であるため、校長という名の役職は存在せず、代わりに学園長という役職がある。まあ、実際は名称が違うだけで、業務内容や組織内での位などは全くの同一であるのだが。 「――それでは新入生の皆さん、着席してください。では次――」  さて、このとある学園――名を『ファンタジア魔法学園』と言うのだが、この学園の入学式は少々変わっている。いや、変わっていると言うよりも、出鼻を挫くと言った方が正しいだろうか。 「――では次に、学園長から新入生の皆さんへ祝辞が送られます――と、言いたい所ですが、誠に残念ながら本日も学園長が欠席なさっておられるので、例年通り次のプログラムへと移らせていただきます。新入生と保護者の皆様方、申し訳ございません。それでは次、教員の方々からのご挨拶です――」  そう、この学園の入学式には、学園長が出席していないのだ。いや、正確には学園で行われる全行事を、学園長は欠席している。更に言えば、学園内での学園長の目撃証言が殆ど無いのだ。そのせいで、学園長の事は、学園の七不思議の一つにされてしまっている。が、何故か『学園長の役職に就いている者がそもそも不在なのではないのか』と言われたことは無いのだった。  と言っても、その七不思議よりも不思議な事実を語る必要は、今は無いのだが。
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