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「……おいで」
瑞希に手を引かれ、部屋に戻る。
水で傷口を綺麗に洗い流され、手際よく包帯を巻かれる。
各部屋に救急箱が常備されているので、ちょっとした応急処置が部屋で出来るようになっているのだ。
「……ありがとうございます。上手いですね」
バンドエイドを貼るくらいならまだしも、包帯を巻くような怪我なんて普通に過ごしてたらそうそうない。
元々の器用さもあるだろうが、手慣れた瑞希の手つきに違和感を覚えつつ礼を言う。
「まぁ、慣れてるからね。それより、あのグラス危ないな。ヒビでも入ってたのか?」
「……多分」
俺は曖昧に答える。
普通、なんの衝撃も与えてないのに、グラスが割れるなんてありえない。
なんだか、何か嫌なことが起こる前触れのような気がして落ち着かない。
そして、その予感は数日後、最悪な形で現実になる――。
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