序章

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走って、いた。 敵。 近づく。 切る。 返す刃でまた、切る。 突く。 引き抜く。 蹴落とす。 この世界に自分と、赤兎以外に誰もいない気がした。 (俺は、誰にも負けぬ) 呂布は、吼えた。 獣のように、ただ吼えた。 あるいはそれは、死を前にした自分を鼓舞するためだったのかもしれない。 敵。 曹操。 あの首を取れば、全てが終わる。 取れる。 そう思った。 刹那 弓に貫かれた呂布の体は、宙に浮いた。 (赤兎) 遠く離れていく赤兎を、呂布の目は、見ていた。
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