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ずぶ、ずぶずぶとそれは奇妙な音をたてて律子に迫っていた。顔らしき物がみえる。はいずるその身体に身がすくみ、逃げることが出来ない。そうだ。どうしてここに来てしまったのだろ。
ここは来てはいけない、死んだ人もいるそうだから…やさしく呟いてくれた彼の声が頭に響く。
あ~な~た~
それは喉が潰れた声でそう言った。
つーたーえーてー
そういうと、それはエビのような不自然な動きをすると律子に飛びかかった。
律子は悲鳴を挙げた。この屋敷にこなければ良かった。
単なる好奇心だったのよ。
ちょっとした冒険のつもり…それが…。
律子の心の声とは裏腹に、それは律子に襲いかかっている。だんだん律子に入り込んでいるようだ。
つーたーえーてー。あの人に。
律子の身体がそれと融合し、やがて律子の中に女が入り込んだ。
そして、律子の恐怖心も吹き飛んだ。
なんだったの。何があったの。そうよ。このお化け屋敷にちょっと立ち寄って彼との思い出を噛み締めていたら。
ベッドの下から…
なんだったの。
忘れてる。何かを見たのに。
律子はやがて考えるのを止めて屋敷を出た。
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