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……ダメだ、全然テンションがのりきらない。
混乱って本格的に人間の思考力を奪うんだね。
しかし、問題は彼女。
話を聞く限りでは俺と接点があるらしいが一体。
「はぁ……まさか忘れてるとは。せっかく良い話かと思ったのに」
溜め息をつく母。
なんだろう、このやりきれない気持ちは。
何か、凄く嫌な予感がする。
「じゃ、せめて少しくらい償いをしてもらわないとね」
そう言うと、母はうなずいた。
償い? 一体何を……
「今日から寝る時は二人で寝なさいね。布団は一つしか渡さないから」
なるほど。
二人で入った方が布団はあったかいものね。
やっぱり人肌は何よりのホッカイロ。
「……ってふざけないでくれ!」
俺の顔を睨む母。
悪いがこれだけは譲れない。
「なんでそんなことになるんだ」
「あんたが忘れてたから」
「そうじゃなくて……」
俺は悔しそうに母を睨む。
しかし、母はそれをいとも軽くあしらった。
「じゃ、一晩頑張ってね」
母の一言は切なく俺の頭に響き渡った。
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