フラグ1§転入生§

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 見たくない。  俺はそんなことを認めないぞ。  考えろ、考えるんだ俺。  ……確か昨日、俺は硬い床の上で寝たはずだ。  何故、今、俺は布団の中に……。 「うぅ……抱きしめてくれないなら……」 「ストップ!」  危ない、何かしてくるところだった。  危険だ。  この女、凄く危険だ。 「なんだぁ、起きてたんですね」  妙に甘えるような声。  猫なで声と言うよりな、まったりとした口調が耳をくすぐる。  あぁ、そんな声を出されたら、男心が……。 「何故だ?」  揺れることがあるわけなかろう!  こう見えても鉄壁の貞操、柳杖寺蛍の名は伊達や酔狂の類いでは無いのだよ。 「何がですかぁ?」 「何故、俺は布団にいる。昨日は床で寝たはずだが?」 「妻ですから。夫が床で寝るのを黙って見過ごすわけにはいきませんよ。だから、此処まで布団を引っ張って来たんです」  ……寝床移動。  俺の部屋が存在価値を失った瞬間だった。  ちくしょう。  狭くても、我が部屋なんだぞ! 「……私、決めたんです」  すると彼女、少し落ち着いた声で話し始めた。  先程までのふざけた……と言うとニュアンスに違いが出るが、甘えた声では無い、真面目な口調。
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