嘘つき少年の気紛れ

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取り敢えず俺はそんな考えを捨て、彼女にタオルをやる。しかし彼女はそんなの御構い無しと言うようにタオルをキャッチせずそのまま床に落とした。彼女がなかなか口を開かないので俺は少し焦っていた。いや、焦ると言うより…気まずい。もしかしたら包丁を持っているのは今日がエイプリルフールだからかもしれない。俺を驚かせたかったのかと一人で納得する。俺が「何かあった?風邪ひくから早く拭きな」と言った。しかし彼女は口を開かない。ずっと俺を見つめている。沈黙。気まずい空気。何かおかしい。彼女の目が少し虚ろなのが気になる。「どうかしたの?何かあった?」俺が言うと彼女はやっと口を開いた。「私、好きな人が出来たの」彼女の言葉に俺は一瞬揺らいだ。しかし今日はエイプリルフールだ。嘘に決まってる。そう嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。ミトメナイ。彼女は俺に御構い無しで喋り続ける。「前に話したでしょ、あの大学2年の後輩君。その子まだ彼女作ってないの。今のうち奪っておかないと駄目なの。盗られちゃうから。彼、素敵なの。私が重い荷物を運ばされた時、持ちますよ、って言って持っていってくれて、私が泣いてる時、『癒してあげようか』って。うふふ、ため口じゃなくなったのはきっと私の事好きになってくれたからよ。だからね、だからね、安希、安希を愛したままでいたい安希に愛されたままでいたい。けど、彼に愛されたい愛したいの。どうすれば良いか分からなくて考えたの。前読んだ小説に愛した者に殺されるのは幸せだって。うふふ、ふふ、安希の事大好き愛してる、だから死んで?ね?直ぐに楽にしてあげるから。」彼女は長い間無機質な声で淡々と語った。しかし俺は彼女が言っている意味を理解出来てない。後輩が好きになったから俺に死んで?いやいや、エイプリルフールだからってやりすぎだろ。俺は言う。「エイプリルフールだからってやりすぎだろ?もう今心臓バクバクして壊れそう」すると彼女は何時もの綺麗な微笑みで言った。 「ふふ、ばれちゃった?」 ,
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