嘘つき少年の気紛れ

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雨の日は嫌いだ。だって雨が降ってたら、服についた血すら流れ落とすだろ? 閉まった筈の玄関から開く音。嗚呼、彼女が帰ってきてくれたのだろう。俺はそう期待して目を動かした。そこには、見知らぬ男が胡散臭い笑顔を浮かべ俺を見下ろしていた。「心臓を刺されたのに、しぶといですね…先輩」何を言っているんだこいつ。嗚呼こいつが彼女をたぶらかしたあの後輩君か。殺したい殺したい殺したい俺から彼女を奪ったこいつをめちゃくちゃにしてやりたい。後輩は口を開いた。「癒してあげましょうか?」笑顔だ。むかつく。苛々する。それにそれは彼女に言った台詞だろ。嫌がらせだろうか。「僕が憎いですか?」嗚呼物凄く憎い。今すぐぐちゃぐちゃにしてやりたいくらいに。「そうですね…名誉挽回で先輩を生き返らせてあげましょうか?」そんな事出来るわけが無い。「出来ますよ…生き返って彼女に復讐したくはないですか?」俺を裏切った彼女が憎い。でもそれ以上にこいつが憎い。一回生き返らせてもらってこいつを殺してしまおう。そう思った矢先、俺は意識を手放した。 「…ふ、エイプリルフールですよ…。あ、…くっ、ふふ、あははははは!!先輩!エイプリルフールは午後からは嘘ついちゃ駄目でした!!……って、僕には関係無いんですけどね」 ねぇ、知ってました?先輩…僕嘘つきなんで何時でも嘘つけるんです。毎日がエイプリルフール。大体『癒してあげようか』なんて気紛れな嘘。僕が癒せるわけが無い。愛なんて僕には存在しないのだから。先輩、貴女は可哀想な人だ。彼女の言った言葉は全て妄想から生まれた嘘。全く怖いものだ。確かに癒してあげようかと言ったもの、誰も重い荷物を変わりに持ったことなど無い。ふ、さて、あの彼女さん…どうでるだろうか。その続きは貴方の想像にお任せしましょう。 皆さんも気を付けて。 僕みたいな嘘つきは平然としながら心の中で道化を飼ってるかもしれないから。 もしかして、あなたも ,
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