prologue・風の吹き初め

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――今日も風が強かった。 昼休み。俺は人混みを避け、裏庭に出る。 中学校なんてのは所詮義務教育であるので、社会性がどうのとか追及されることはない。 故に、昼休みに一人でこんな所をブラブラしていたって誰も文句は言わない。まあ、高校に上がっても言及する人なんざ居ないんだろうけど。 俺には幼なじみが居るが、校区の関係上それぞれ違う中学に通う羽目になってしまった。 そいつは女の子だがそれなりに仲は良い。しかし今は傍に居ない。元々人付き合いの良くない俺は、昼休みは一人で居ることが多かった。 この学校で友達は作らないのかだって? ああ、出来てしまったさ。男友達とも呼べないような腐れ縁が一人だけな。だが、今日は何があったか学校を休んでいた。 だから雨でも降るかと思いきや、本日はお日柄も良く。ゆえに俺はお気に入りの場所で昼寝でもしようかと考えていた。 しかし、いつものように人気の少ないそこへ行ってみると、今日は先客が居た。しかも何だか穏やかじゃない。 大木の陰で、一人の女の子が泣いていた。
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