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駅から少し歩いた辺りで美依と別れ、俺達は各々の帰路に着いた。
辺りがとっぷりと闇に飲まれた頃。早住居しだして三ヶ月程経過した、家賃がお手頃だと言う理由で入居を決めたマンションにようやく到着した。
玄関の前で一息ついて、鞄の中から鍵を捜していると大家さんに声を掛けられた。
どうやらお袋は数日前には既に荷物を発送していたらしく、大家さんから荷物を受け取った。
くそ重い荷物を抱えて部屋に入ると同時にすぐさま床に荷物を置いた。
一体どれだけ爺ちゃんはガラクタを集めていたのだろうか、この段ボール箱尋常じゃない重さである。
あー、腕がいてぇ。
美依に荷物が届いていた事を知らせるメールを打ちつつ麦茶を呷る。
メールを送って僅か数秒足らずで返信は返ってきた。
明日俺の家に来ると言う内容。無駄に多い絵文字があしらわれた文面を眺めつつ、空になったコップを机の上に置いた。
何も、美依が俺の部屋を訪れるのは珍しい事じゃない。よく遊びにも来るからな。
大学の奴らにも度々訊かれる。おまえら本当は付き合ってるんじゃないか、と。
そんな事は断じてない。お互いに気は合うものの恋愛感情なんてものはこれっぽちも抱いちゃいないだろう。
長年共に成長して来たわけだ、恋人ではなく親友と言ったところ。
尤もこれも俺の勝手な推測に過ぎず、ただでさえ何を考えているか解らない美依が俺の事をどう思っているかなんて、幼なじみの俺ですら知る由もない。
まぁ、美依と俺の関係なんてそんなもので周りの奴らが思うような間柄じゃないってこった。
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