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本当に白が似合う子。
誰もが口を揃えてそう言った。
「おいで白奈(シロナ)」
そう呼ばれて振り返ったのは12歳くらいの女の子。
ミルクティーで染めたようなショートカットはぴょんぴょんハネていて。
瞳は両手で持っているアールグレイの紅茶をそのまま映したような色だった。
彼女は『天使』、そんな表現がぴったり。
白いワンピースが白い肌に本当によく似合った。
「ごめんお母さま。お父さまが呼んでる」
年には合わない落ち着いた声で白奈が言うと、向かい側に座っている『お母さま』と呼ばれた女性が行きなさい、そう優しく言った。
白く丸い机にティーカップを置いて、父の元へ白奈は小走りで行く。
お庭でのお茶会はこれでお開きになるだろう。
青空のもと、若々しい芝生の上を白いシューズで駆けてくる娘を見てほころばせた父がいた。
「白奈、こっちこっち」
手招きをする父に、白奈は頭にクエスチョンマークを浮かべて近寄る。
「なに?お父さま」
「出来たんだよ。ほらっ、目をつむって手を出してごらん」
言われた通りにすると、手に重みを感じる。
柔らかな手に乗った金属とプラスチックのかたまり、
それは冷たかった。
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