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息をする度に 舞う煙 宙を描いて 細く棚引く糸のよう 私の服に 体に 中に 貴方と煙草の混合された香りが 月日を重ねる程に 体を重ねる程に どんどん私に 染み付いていっている 貴方のその強い香りで 私は時々 自分が存在しているのか疑わしくなってしまう 貴方の香りに包まれて 安心すると同時に 私は貴方に何が残せているのか 少し 怖くなる "身に染み付いた香りは 簡単には落ちないさ" "それとおんなじ位に 俺も煙草の味が 舌と鼻に染み付いてるんだな" いつしか貴方が言ってた 『今まで吸った煙草って どのくらい?』 ただ 聞いてみた 沢山の種類と その度数のレパートリーの広さに 貴方の過去の女を見た気がした 貴方の指の 2番目の関節には 私は決して踏み込めない たとえ 私と別れても 貴方の第2関節には また違う煙草が あるだろうから 貴方が帰った後の部屋 家具 服 私 貴方が接した全てに 貴方の香りだけが残り 肝心な貴方の 体も温度も その癖のある笑顔も すぐに 消えてしまって どこにもいない 甘い甘い言葉よりも 温かい貴方の体よりも 少し低めな その声よりも 私に残っているのは 貴方と 貴方の"一番のお気に入り"の 煙草の香りだけ そして いつでも目に焼き付いて 記憶に残るのは 赤黒い焔の燻を消す 貴方の後ろ姿 *
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